自分個人での生産性のみならず、もっと組織として強化したい組織としての生産性を高めたいと思った際、管理の一面は外せません
組織を強化するにあたって管理の要素は必要不可欠で、広岡達郎氏、森祇晶氏らが実施した『管理野球』という言葉も、プロ野球ファンの方などは聞いた事があると思います。
野村克也氏の『ID野球』や星野仙一氏の指導法もこれに基づいていて、いずれも組織は強化され、優勝という栄冠を掴んでいます。

管理というと少し堅苦しく感じるかも知れませんが、組織を強化するにあたっては少なからず管理の要素を導入し、規律も守る事で、組織としての推進力を高められます。
その管理法を科学的に打ち出した第一人者がアメリカのフレデリック・テイラーで、『テイラー・システム』とも呼ばれる手法は現代の経営学・経営管理論・生産管理論の礎ともなっています。

テイラー・システム

フレデリック・テイラーはアメリカ合衆国のエンジニアであり、経営学者でした。
『テイラー・システム』は俗称で、学術的には『科学的管理法』と呼ばれています。
科学的管理法の発案者であるフレデリック・テイラーは、現代において「科学的管理法の父」とも称されます。

この科学的管理法はその後、ガントやギルブレス夫妻らによって更に発展しました。
ガントとはアメリカ合衆国の機械工学者であり、経営コンサルタントです。
1910年代に『ガントチャート』を考案したことでも知られています。
ガントチャートはアメリカの大型ダムや高速道路建設の公共事業でも採用され、現在でもそういったプロジェクトマネジメントにおいて使用されています。
ギルブレス夫妻は、フレデリック・テイラーと親交のあったご夫婦です。

科学的管理法が生み出されて実行された背景としては、20世紀初頭までのアメリカの経営は論理的な視点に基づいたものではなく、それまでの経験や習慣によって惰性的に続いていた「成り行き経営」でした。
よく言えば自由とも言えますが、これでは仕事の生産性は上がりません。
実際に当時、経営者側・労働者側の双方がそれぞれに不満を持ち、業務は滞りがちでした。

それもそのはず、労働者側からしてみれば、頑張って成果を上げても評価されない、経営者側からしてみれば成果を把握する基準が難しい…そんな状態でした。
これでは組織が上手くかみ合いません。
結果、だらだらとした怠惰な雰囲気が蔓延し、非効率な状態が続いていました。

そこでこの状況を打開すべく、フレデリック・テイラーは取り組みました。
そしてテイラーは、組織の生産性を高めるには科学的な管理に基づいた手法が必要であると見出したのです。

テイラーの提唱した科学的管理法の大きなポイントは、
課業管理
作業の標準化
作業管理のために最適な組織形態

この3つです。
特に課業管理に関しては、このシステムの核となっています。

ですので、課業管理にあっては更に、
課業の設定
諸条件と用具等の標準化
成功報酬
不成功減収
最高難易度の課業

この5つが重要であるとテイラーは具体的に指摘しました。

課業とは、ノルマです。
つまり「課業の設定」とは、ノルマの設定を意味します。
明確な目標がなくては、やはり仕事への意識も漠然としてしまいます。
この状況を打開すべく、テイラーはノルマを設定する事を推し進めました。
無理なノルマというのは逆効果ですが、適切なノルマは目標に対する意識が生まれ、組織が引き締まります。

諸条件と用具等の標準化」では、使用する用具や道具に個人差がないよう均一にし、それをデフォルトとしたうえでベストな生産方法を確立させていきました。
いわば、マニュアル作りとも言えるでしょう。
結果的にそれは組織全体の作業能率アップへと繋がりました。

作業能率アップへと繋がりました

「成功報酬」「不成功減収」に関しては現代でもよく聞かれるシステムですが、いわゆる出来高制です。
きちんとノルマを達成して成果を上げた場合は対価としてそれ相応の賃金をプラスして支給し、未達成の場合は逆に差し引きます。
年単位での評価という点では違いがありますが、プロ野球選手の契約更改のイメージと近いと思います。
活躍した選手は年俸がアップし、結果を出せなかった選手は年俸がダウンします。
これが仮に、結果を出しても出さなくても一律の年俸が支払われてしまっていたとしたら、選手はやる気をなくしてしまいます。

最高難易度の課業」とは、優秀な労働者がこなせる業務量に準じてノルマを設定するという形です。

課業の設定、諸条件と用具等の標準化、成功報酬、不成功減収、最高難易度の課業。
この5つが課業管理には重要となります。

科学的管理法の大きなポイント2つめ、作業の標準化に関しては、作業研究とも呼ばれています。
これは時間研究と動作研究の2つから成り立ちます。

時間研究とは、いわゆる定時を設定し、その中でこなすべき課業を決定する研究です。
課業の決定にあたっては前述の通り、優秀な労働者の業務量が1つ基準となります。

動作研究とは、用具や手順を標準化する・マニュアル化するにあたっての研究です。
具体的にテイラーは、工程における作業全般を更に『要素動作』として小分けにし、その1つ1つについてストップウォッチを使用し時間を計り、その動作1つを終えるにあたっての目安となる時間を算出していきました。

働くうえではコストに対する意識も重要ですが、時間に対する意識も重要です。
時間の浪費は、コストに直結します。
それに対し、いち早く取り組んだのがテイラーだったのです。
尚、ギルブレス夫妻らによってこの研究は更に進み、効率的で無駄のないベストな動作の追求が行われるようになりました。
また、ベストな動作に基づいた時間研究もなされるようになりました。

科学的管理法の大きなポイントである3つめは、作業管理のために最適な組織形態です。
テイラーによって科学的管理法が提唱される前まで、組織は内部請負制により稼働していました。
つまり、行き当たりばったりで何の論理性もない企画や立案が現場で提案され、組織は稼働していました。

テイラーは現場で実務をこなす部隊とは別に、企画・立案を専門に行う部署と管理を専門に行う部署をそれぞれ新設しました。
これは分業制というよりは、むしろファンクショナル組織の形成です。
function=ファンクションとは『機能』を意味します。
つまりファンクショナル組織とは、機能別に部署を分けた、職能別組織です。
プロジェクトの計画を立てる者と実行させる者を分けます。

以上がテイラーの提唱した科学的管理法の概要です。
それまで雑然としていた現場を管理によって改善させたのは大きな功績であり、のちの現代社会における生産や経営に関する理論の大元となっています。
また、それまでの「成り行き経営」や現場の親方次第だった稼働ではなく、経営者が労働者を使用し、計画をする者・現場で実務をこなす者・現場で働く人間を管理をする者を分けた事は、産業を急速に発展させていきました。
テイラーはその後も経営コンサルタントとして科学的管理法の指導を広め、生産性の向上や労働者の賃金アップに貢献しました。

一方で、計画や管理をする者と現場で実務をこなす者を分けた事で階層を作ってしまったという批判や、階層として分離させた事で組織内に対立関係が生まれたと指摘する声もありました。
いわゆる、ホワイトカラーとブルーカラーにまつわる話になります。
ホワイトカラーとは、白いYシャツやスーツを着て働くブレイン側の人間にあたります。
ブルーカラーとは、青い作業服を着て働く労働者にあたります。

たしかに現代においても、春闘に代表されるようにブルーカラーの労働者がホワイトカラーの経営者へ賃金アップなどを求める闘争がしばしば起こっています。
また、この科学的管理法は心理学や社会学の見地に立っておらず、効率ばかりを追求した結果、現場における労働者のイデオロギーや気持ちをないがしろにしているとの批判もあります。

こうした論点でポイントとなるのは、企業規模です。
組織を企業とした場合、企業規模が大きいところでは陣頭指揮を執る人間がいなくては烏合の衆となってしまいます。
ですので、科学的管理法により部署を分離させて、効率的に組織を稼働・推進させる必要があります。

しかし、企業規模が小さいところでそれをやってしまっては、現場の労働者は白けて、労働意欲をなくしてしまいます。
ですので、規模が大きくない企業では、計画や管理に回る人間自らがプレイングマネージャーとして動き、現場での実務もこなしながらマネジメントもこなし、組織を牽引していくのが理想です。

科学的管理法には批判もありましたが、その後もこの理論を実践し昇華させていった経営者達によって改善がなされ、社会全体における生産性の更なる向上や経営学の発展へと繋がりました。

転職をした場合、後進の育成などマネジメントを任せられるケースも多くあります。
そうした折に、こういった理論が1つ参考になる部分というのは実際あります。
ぜひ、ご参考にしてみて下さい。