転職する際には、法律で決められていたり人道的な観点からおさえておきたいポイントというのがいくつかあります。
いまの職場に辞意を伝えづらくて退職届の提出が直前になってしまった…などというケースも世の中なきにしもあらずですが、出来れば社会人としてベストな退職の形を心がけたいところです。
退職届の提出など辞意の表明は、法律上では2週間前までに行えばいいものとされています。
しかし、実際の現場をかんがみると、2週間前の辞意表明はあまりにも直前すぎてしまいます。
後任への引き継ぎ等を考え、最低でも2ヶ月前までには前もって伝えるようにしましょう。
ちなみに、退職届というのは「辞めます」といった断固たる表明で、退職願は「辞めたいです」というお願いです。
いわゆる辞表は、退職願にあたります。
願いというのはあくまで要望なので、場合によっては覆ってしまう事があります。
正式にきちんと辞めたいのであれば、退職届を提出しましょう。
辞意を伝える相手は、まず直属の上司へ行う形が一般的です。
そこを飛び越えて人事部などへ直訴してしまったり、同期の仲間にだけ伝えたあとで直属の上司に辞意が伝わるのは、場合によっては気分を害してしまい、その後の人間関係が不必要にこじれるケースもあります。
好き嫌いはさておき、直属の上司というのはこれまで少なからず仕事の面倒を見てきてくれた存在です。
そこは社会人として礼節わきまえ、筋を通した形で、まずは直属の上司へ打ち明けましょう。
退職理由についても「給料が安いから」等、たとえそれが本音の理由だったとしても、そこは社会人としての本音と建前を使い分けましょう。
「嘘も方便」ということわざもあるように、何でもかんでも本音を言ってしまえばいいという事はありません。
ときにはマナーとして、本音を伏せる事も必要です。
転職するにあたっては、理由は1つではないケースも多いと思います。
その中から、たとえば体調面であったり家庭の事情などにスポットを当てて伝えられると、嘘ではない点で道徳的にも悪くなく、また、相手の気分を害したり否定する形にもならず、お互いにとってより良い形となるでしょう。
上司から引き留め交渉があった際は、慎重に対応しましょう。
既に転職先が決まっていたり辞める意志が揺るぎないものであるならば、交渉を受けたうえでの結論も早めに伝えてあげた方が相手も後任の準備を進めたり出来る点でベターです。
伝え方に関しては初めて伝えたときと同様に、相手を否定したり気分を害してしまうような本音は伏せて行えるとベストです。
引き留め交渉を受けたうえで残留する余地があった場合も、残留して自分に悔いが残らないか、残留にあたっての要望を本当に受け入れてもらえるのか等、慎重に検討しましょう。
退職が決定した暁に一番取り組むべき事は、後任への引き継ぎです。
退職するその日までお給料をもらう以上、自分自身の通常業務へ変わりなく取り組むのはもちろん、後任への引き継ぎや後進の育成などにも全力を尽くし、有終の美を飾れるようにしましょう。
引き継ぎなども考えると、退職する時期というのも重要です。
かなり業務の忙しい繁忙期に退職してしまうのは残された社員の方々にとってつらい状況になってしまうので、可能な限り現在の職場への影響が少なくてすむタイミングを選ぶ事は大切です。
また、退職するにあたっては、会社から借りていた物を忘れずきちんと返しましょう。
過失にしても備品などをそのまま返さずにしてしまうのは、窃盗になってしまいます。
退職の手はずと共に、こうした部分も意識して確認しておきたいところです。
退職届以外にも必要な書類の提出というのは総じて必要になりますが、そうした手続きにも期間的に余裕を持って取り組む事は、辞める側としての礼儀でもあります。
辞める人のための対応というのは、ややもすると企業にとっては実りある業務ではないかも知れません。
そうした業務に対応してもらえる事にも感謝の意を込めて、誠実かつ滞りのない進行で書類を提出できるよう心がけましょう。
また、情報の管理についても気をつけたいところです。
社員には守秘義務というものがあり、その会社の機密事項など内部の情報を外へ漏らしてはいけない事になっています。
顧客情報を持ち出す事も絶対にあってはならない事です。
しばしば大手企業の顧客情報が流出してしまった事案がニュースになりますが、それぐらい大変な出来事であるのは事実です。
ここは特にシビアに意識しておきましょう。
社内外でお世話になった方々への挨拶も、忘れないでおきたいポイントです。
形としては、メールやハガキが一般的です。
特にお世話になった方には、菓子折りを持って直接お礼を伝えに行くのも良いでしょう。
以上が、退職時におさえておきたいポイントです。
働く側にも権利はありますが、雇う側にも権利はあります。
あまり自分勝手な退職方法を取ってしますと、場合によってはトラブルを招きかねません。
辞めるときこそ、人柄というのは表れるものです。
立つ鳥跡を濁さず。
「辞めるからいいや」ではなく、引き継ぎなどもしっかりと行ったうえで、お互いを尊重し合った形での円満退職に努めましょう。