不動産信託受益権について、皆さんは聞いた事がありましたでしょうか。
なかなか聞き慣れない言葉だと思いますが、不動産業界では流行りを見せつつあります。

不動産信託受益権とは

不動産取引というと、通常これまでは実物のやり取りが当然として行われてきました。
しかし、この不動産信託受益権とは、実物の不動産ではなく、証券にあたります

流れとしてはまず、不動産の所有者が自己の不動産について、信託銀行で信託を設定します。
つまり、その不動産の所有権は信託銀行へ移ります
しかし、あくまで信託設定したのみで実物不動産を売却したわけではないので、その不動産所有者は引き続きその不動産による収益を得られる権利を持てます
この権利の事を、不動産信託受益権といいます。
そして、この権利は有価証券化され、取り引きが可能です。

取り引きにあたっては、不動産取り引きではなく金融商品取引法上の有価証券の取り引きにあたるので、宅建業の免許ではなく、第二種金融商品取引業としての登録が必要になります。
しかし、不動産信託受益権の売主となる場合、重要事項の説明をしなくてはなりません。
ですので最近、ビジネスチャンスとして宅建業者が第二種金融商品取引業の登録も行い、不動産信託受益権の売買代行を行うケースが増えてきました

尚、平成19年の法改正により、不動産信託受益権に関する条文が宅建業法35条に追加されています。
条文としては…

宅地建物取引業者は、宅地又は建物に係る信託(当該宅地建物取引業者を委託者とするものに限る。)の受益権の売主となる場合における売買の相手方に対して、その者が取得しようとしている信託の受益権に係る信託財産である宅地又は建物に関し、その売買の契約が成立するまでの間に、取引主任者をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
ただし、その売買の相手方の保護のため支障を生ずることがない場合として国土交通省令で定める場合は、この限りでない。

一  当該信託財産である宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあつては、その名称)
二  当該信託財産である宅地又は建物に係る都市計画法 、建築基準法 その他の法令に基づく制限で政令で定めるものに関する事項の概要
三  当該信託財産である宅地又は建物に係る私道に関する負担に関する事項
四  当該信託財産である宅地又は建物に係る飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)
五  当該信託財産である宅地又は建物が宅地の造成又は建築に関する工事の完了前のものであるときは、その完了時における形状、構造その他国土交通省令で定める事項
六  当該信託財産である建物が建物の区分所有等に関する法律第二条第一項 に規定する区分所有権の目的であるものであるときは、当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容、同条第四項 に規定する共用部分に関する規約の定めその他の一棟の建物又はその敷地(一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又はこれに関する権利がそれらの建物の所有者の共有に属する場合には、その土地を含む。)に関する権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で国土交通省令で定めるもの
七  その他当該信託の受益権の売買の相手方の保護の必要性を勘案して国土交通省令で定める事項

このような内容です。
宅建業法35条は、重要事項の説明に関する条文です。
つまり、重要事項の説明の1つとして、不動産信託受益権に関する項目はこうした形で正式に追加されています。

不動産信託受益権

不動産信託受益権売買のメリットとしては…

①実物不動産よりも流通コストを抑えられる
管理の手間が省ける
③受託者・委託者の倒産の影響を受けなくなる(信託特有の『倒産遠隔機能』)
④高額なので仲介手数料が多く入る

こういった点が挙げられます。
一方のデメリットとしては…

信託特有の事務処理になり、非常に複雑である
②その不動産信託受益権の利害関係者は大抵多数になり、諸々の調整等が困難になりがちである
③実物不動産のように先に契約を行って物件を押さえるといった事が不可能に近い
瑕疵担保責任の所在が難しくなる

こういった点が挙げられます。
また、実際に不動産信託受益権が取引されるケースとしては…

①実物不動産を信託した売主が、信託受益権について売却を行う場合
②実物不動産と信託受益権の両方について、売主から買主に渡る場合
③買主が信託受益権については解除し、信託銀行等の受託者から実物不動産を返還してもらい、実物不動産として所有する場合
④設定された信託受益権を解除し、実物不動産の所有権が売却される場合(実物不動産の取引と同じ)

このようなところが代表的なケースになります。
なかなか複雑かつハードルの高い取引になるので、信頼の出来る専門業者が代理で行う場合がほとんどです

いかがでしたでしょうか。
以上が不動産信託受益権の概要です。
不動産に関する権利を有価証券化する事でもメリットもありますが、もちろんデメリットもあります。
様々なケースに対応するには、金融商品取引業としてもプロになる必要があります。
ですが、宅建業と金融商品取引業の両方に精通した業者には非常にアドバンテージのある市場です

最近、流行りを見せつつある、不動産信託受益権の売買。
これから不動産業界へ就職・転職される方も、また既に不動産業界で働かれている方も、ぜひご参考にしてみて下さい。