就職や転職というと、どうしても求職者サイドの目線の話は多くなります。
それもそのはず、求職者数と企業数を比べると求職者の方が絶対的に多いので、当然といえば当然といえます。

しかし、雇用関係というのは本来お互いにとってイーブンで対等なもので、働く側としても職を必要としていますし、企業としても人員を必要としています。
労働者は生産性のある仕事をしたり成果を生み出し、企業はその対価として給与を支払います。
雇用契約というものも実際にあるように、就職や転職は紛れもなく双務契約であり、お互いに責務を果たすことで、お互いにメリットがある形が理想的な雇用関係となります。

求職者としても就職や転職は人生のターニングポイントであり、なかなか大変ですが、企業もそれは同じで、実は人を1人雇うというのは、求職者サイドが考えているよりもとても大変なことなのです。

大変なことです

社会保険を完備するにあたっては、雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金保険の各種手続きを書類作成の下に行いますし、給与から源泉徴収を行い、所得税を税務署へ納税する必要もあります。
他に、就業規則の作成や説明、各種手当など福利厚生の充実を図る義務もありますし、何かと時間やお金のかかるものです。

厚生年金は厚生年金保険法により、会社が半額を負担してくれています。
交通費も、出してくれる企業がほとんどだと思います。

一般的に、人を1人雇うには、その給与の3倍が毎月必要になるとも言われています。
確かに保険関係や交通費など、実際色々と固定費としてかかります。
全て丸々引っくるめて固定費や管理費として、売上に関係なく、かかり続けます。

また、設備や備品を用意したり、事業所を拡大したりなどにもお金がかかります。
定年まで雇った場合、その金額は億単位になります。
大手企業は福利厚生や施設・設備にも力を入れているので、諸々含めると1人あたり定年まで3億円かかるという話は昔から言われている話なので、もしかするとどこかでチラッと聞いたことのある方も少なくないと思います。

このように、雇用にあたっては働く側も大変ですが、雇う側としてもとても大変なもので、手続きや説明、育成やマネジメント等、求職者サイドが思っているよりも遥かにコストや手間のかかることなのです。
雇って育てても、退職されてしまうリスクもあります。
雇ってから育つまでの段階では企業にとっては先行投資の形でマイナスでしかなく、その人材が育って成果を上げられるようになって、はじめてプラスになってきます。
ですので、自分で成果を上げられるようになる前に辞めてしまうのは、企業にとって本当に痛手なのです。

もちろん、企業にも育てる手腕は必要ですし、末長く働きたいと思ってもらえるような環境作りなど定着率アップに向けた努力も必要です。
ですが、求職者>企業といった、その絶対数の関係から、総じて雇用にあたってはどこの企業も苦労しています。

「求人に関しては苦労していない」と言える企業は、ほぼ皆無であると言っても過言ではないと思います。
採用にあたっては大手企業も楽観視できないので、だからこそ求人情報の掲載やセミナーの開催などにも止めどなく力を入れているのです。

セミナー風景

雇う入り口の部分も大変ですが、雇ってからも大変です。
育成関係の部分もそうですし、「話が違う」と訴えられるリスクもあります。
実際、残業代をめぐるケースに関しては裁判も増えてきています。

労働者も自分の人生や家族の生活のために必死ですが、企業も法律的に社員を守ったりリスクを持ったり、とても大変なのです。
企業努力が足りずに業績不振のリストラで社員の人生が変わってしまうこともありますし、そうした意味では社員の人生も企業は背負っています。

また、雇う人数が多くなればなるほど、企業規模が大きくなるにつれて、手続きやマネジメント関係など本業以外での苦労が多くなるのも企業にとっては付き物です。
「本当にいい人に来てもらいたい」と切実ですが、雇ってみないと分からない面も多く、働いてもらいはじめてから色々と問題が発覚し、変な部分にばかり手がかかり、「これだったら雇わずに忙しい方が良かった」と嘆く事業主も世の中には少なくありません。

こういったリスクも全て企業は受け持っているので、採用にあたっては長期的な視点かつ慎重なスタンスで企業は精査しています。

このように、人を雇うというのは企業にとっても本当に大変なことで、事業拡大や節税のメリットもありますが、総じて苦労の連続です。
ですので、現場の人間ももちろん重要ですが、人事は特に社員の模範となる人間や能力のある人間が配置される傾向にあります。

こうした企業の視点も知ることで、就職や転職に対する意識も高まりますし、仕事に対する意識も高まります。

少しシビアな話ではありますが、スキルアップしていくにつれ管理職に就いたりマネジメントや採用を担当することになるケースは多いです。
就職・転職の機会のみならず、働くにあたっても知っておいて損はない視点なので、ご参考にしてみて下さい。