エスクローについて、みなさんはご存知でしたでしょうか。
近年、日本でも大手オークションサイトがこうしたサービスを開始しているので、ご存知の方もいらっしゃると思います。
エスクローは元々、不動産取引における仲介サービスの1つで、アメリカではエスクローを行う会社を仲介させなくては取引が出来ない仕組みに法律上なっていて、契約業務に関わる弁護士がエスクローを担当しているケースがあります。
エスクローとは、売主と買主の間にエスクローを専門に行う会社が仲介し、不動産決済に際しての売主・買主双方の安全性を確保するサービスです。
売主と買主の間に中立の第三者としてエスクロー会社が入る事で、不動産取引をより安全に進められるようになります。
このエスクローサービスですが、まだ日本の不動産業界ではあまり利用されていません。
理由としては、日本の不動産業者は調査から契約まで一括して行う事で受注している企業が多いといった時代的背景などが挙げられます。
エクスローの仕組みとしては、インターネットオークションなど電子商取引・イートレードでのケースをご想像いただくと分かりやすいかも知れません。
インターネットオークションでのエスクローサービスの流れとしては…
①落札者はエスクロー業者へ落札代金を預けておきます。
②品物が無事に出品者から届いたら、落札者はエスクロー業者へ連絡します。
③エスクロー業者から出品者へ品物の代金が支払われます。
このような流れです。
落札したが品物が届かない・欠陥品が届いた・違う物が届いた等のトラブルもしばしばあるインターネットオークションでは、実際にきちんと品物が届いてから出品者へ代金が支払われるエスクローサービスは魅力的です。
不動産取引ではチェック項目が増えるので、インターネットオークションなどにおけるエスクローほどシンプルではありませんが、イメージとしては近いものがあります。
不動産売買でのエスクロー業者を利用した際の主な取引内容としては、
・不動産売買契約の締結や借用証書締結をエスクロー業者がサポート
・買主は購入代金をエスクロー業者へ預託
・売主は所有権移転に際して必要な書類をエスクロー業者へ預託
・エスクロー業者が司法書士へ申請書類を交付
・司法書士による登記申請をエスクロー業者より依頼
・預託された購入代金をエスクロー業者より売主へ支払い
・買主への新しい登記簿情報をエスクロー業者から通知
このような形になります。
高額になりがちな不動産売買へエスクロー業者ををはさむ事で、専門家の第三者の調査が加わり、取引が安全なものになります。
家が傾きはじめたと思ったら、昔そこは防空壕だった!なんて事も…。
そうしたトラブルを防ぐために、実際にそういったエスクロー調査を行っている業者は既に日本にも存在しています。
シロアリ調査についても、エスクローにおけるリサーチ内容としている業者もいます。
このエスクローというものは買主の安全だけを守るものではなく、売主側にもメリットがあります。
売主からしても、あとから隠れたる瑕疵(欠陥)が発見されてトラブルにはなりたくないものです。
そうしたトラブルを回避し、安全に取引を行えるよう取り持つのがエスクローサービスです。
エスクローを利用すると、売主・買主双方が保護される形になるので、両者とも取引そのものへ傾注できます。
具体的に、エスクローを利用した際の売主側のメリットとしては…
・エスクロー業者が土地や物件の調査を精査してくれるので、その時点で分かった問題点について事前に対策を取れる。
・売買契約成立後・引き渡し後に土地や物件の瑕疵(欠陥)が発覚し、損害賠償請求をされるリスクを軽減させられる。
・エスクロー調査済みとして、買い手が付きやすくなる。
・不動産仲介業者の主観的な価格ではなく適正価格になる。
・エスクロー業者をはさむ事で適正価格で取引が行われるので、取引がスムーズになる。
・エスクロー業者を公正な第三者としてはさむ事により、所有権移転登記を安全かつ確実に行える。
このようなところです。
一方、買主側のメリットとしては…
・売買契約成立前に欠陥や瑕疵について判明する確率が高くなる。
・その不動産の欠陥や瑕疵について、公正な第三者の専門家であるエスクロー業者から説明を受けられる。
・購入後に起こりうる問題点についての不安や心配が減る。
・不動産購入後の欠陥や瑕疵について、具体的な金額に基づいた交渉がしやすくなる。
・適正価格での取引が可能となる。
・エスクロー業者による物件調査報告書の発行も可能なので、購入後に売却する際にも安心感が持てる。
このようなところです。
日本ではまだ馴染みの薄いエスクローですが、事前の物件調査が重視される傾向は強まってきています。
あとになって欠陥が発覚したりトラブルになるよりは、事前調査をしっかり行う事で防げるのであれば、そちらの方がいいと考える人が増えてきていると見受けられます。
もしかしたら日本でもエスクローが流行したり、アメリカのように法律で利用が義務付けられるなんて事も、今後ありうる話かも知れません。
今後、不動産業界への就職・転職をお考えの方も、ぜひエスクローについては知識の一つとしてご参考にしてみて下さい。