不動産用語の常識【重要事項の説明(重説)とは】内容を把握しよう!

不動産業界で働くにあたって絶対に知っておいた方がいい事柄の1つに重要事項の説明があります。
重要事項の説明は、よく「重説」とも略されて言われます。
宅建業者は、物件を取得し又は借りようとする人に対して、契約が成立するまでの間に、重要事項説明書(35条書面)を交付して取引士に重要事項の説明をさせなけれはばなりません。
そこで今回、重要事項の説明について、その内容をまとめました。
大事な部分は【 】でくくってあります。

重説ポイント

まず、重要事項の説明義務にあたってのポイントとしては…

【取引士】が、
【物件を取得し又は借りようとする人(買主・借主)】に、
【契約が成立するまでの間】に、
【取引士の記名押印のある重要事項説明書(35条の書面)を交付して説明する】

必要があります。
重要事項の説明を行う取引士については、【専任なのか一般なのかは問いません】。
尚、【説明場所についての定めはない】という点も、ポイントです。

注意点としては…

◎原則として、複数の業者が1つの取引に関与した場合でも、【全ての業者に重要事項の説明義務】を課しています。
◎複数の業者が協力して1つの重要事項説明書を作成した場合、重要事項説明書を共同作成した事と1つの業者が代表して説明を行う旨を宅建業者は相手方に対して説明し、【1人が代表して】、買主に対して重要事項の説明をさせる事が可能です。
◎複数の宅建業者か?取引に関与し、それぞれの取引士が分担して説明した場合、1人の取引士が記名押印するだけでなく【他の取引士も記名押印する事】になっています。
◎重要事項の説明内容に誤りがあったときは、書面に記名押印した業者、取引士は、その内容について【各自が責任を負う】事になります。
◎宅建業者は、宅地又は建物に係る信託受益権の売主になる場合、原則として、一定事項について重要事項の説明義務があります。
ただし、次の場合等は、説明しなくても大丈夫です。
・金融商品取引法に規定する【特定投資家】等を信託の受益権の売買の相手方とする場合
・信託受益権の【売買契約の締結前1年以内】に売買の相手方に対し当該契約と同一の契約について書面を交付して説明をしている場合
・売買の相手方に対し、【金融商品取引法に規定する目論見書】を交付している場合

注意点

上記が注意点です。
そして、説明すべき事項としては…

◎対象宅地建物の上に存する所有権・抵当権等の登記された【権利の種類】・内容、登記名義人、登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあっては、名称)
※登記できる権利の種類には、所有権の差押や買戻権・仮登記、抵当権、質権、地上権、地役権、先取特権、賃借権等があります。
◎都市計画法、建築基準法その他の【法令に基づく制限】で、”契約内容の別に応じて”政令で定めるものに関する事項の概要
※開発許可、国土法の届出、宅造法による工事の許可、農地法5条の許可、建ぺい率、容積率、建築物の用途制限、その他がこれにあたります。貸借物件については、建ぺい率、容積率等は説明しなくて大丈夫です。契約内容により適用されるものを説明する事になります。
◎当該契約が、”建物の貸借の契約以外のもの”であるときは、【私道に関する負担】に関する事項
※建物の貸借物件以外ものであるときは、「私道負担の有無・面積・位置」を説明しなければなりません。
◎飲用水、電気、ガスの供給ならびに排水のための【施設の整備状況】(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し、その整備についての特別の負担に関する事項)
◎取引の対象となっている宅地建物が宅地の造成・建築に関する【工事完了前のもの】であるときは、その【完了時における形状・構造】その他工事完了前の宅地にあってはその宅地に接する道路の構造・幅員が、工事前の建物にあってはその建物の主要 構造部・内装と外装の構造と仕上げ・設備の設置と構造が、説明事項とされています(同法施行規則16条)。尚、図面があれば、図面を交付して説明する事とされています(通知)。
※内装及び外装については、主として天井及び壁面につきその材質、塗装の状況等を説明しましょう。
※工事完了時売買においても、工事完了前売買と同様に宅地建物の形状、構造等を説明する事とします(通知)。
※本号に掲げる事項について図面を交付したときは、その図面に記載されている事項は改めて重要事項説明書に記載する事を要しません(通知)。

売買代金・交換差金・借賃以外に授受される金銭】の額、当該金銭の授受の【目的】
※手付金・敷金・権利金等の額と目的の事です。保管方法は説明を要しません。
◎【契約解除】に関する事項
◎【損害賠償の予定・違約金】に関する事項
◎手付金等を受領しようとする場合における【手付金等の保全措置】の概要
◎【支払金・預かり金】。宅建業者の相手方等から、その取引の対象となる宅地建物に関し受領する代金・交換差金・借賃・その他の金銭(手付金等の保全措置が講じられている手付金等を除く)で、国土交通省令で定めるものを受領しようとする場合における保証・保全の措置の有無、及びその措置を講ずる場合におけるその【措置の概要】。
※50万円未満のもの、登記以後に受領するもの、報酬等は含まれません。
◎代金・交換差金に関する【金銭の貸借(融資)のあっせんの内容】(融資の条件等)当該あっせんに係わる金銭の貸借が成立しないときの措置
◎【その他相手方の保護の必要性、契約内容の別を勘案して国土交通省令・内閣府令で定める事項】
・造成宅地防災区域内にあるときは、その旨(売買・貸借)
・【土砂災害警戒区域】にあるときは、その旨(売買・貸借問わず説明が必要)
・津波災害警戒区域内にあるときは、その旨(売買・貸借)
・【石綿(アスベスト)の使用の有無】の調査の結果が記録されているときは、その内容 (建物の売買・貸借)
・耐震改修促進法に規定する技術上の指針となるべき事項に基づいて、一定の者が行う【耐震診断を受けたものであるとき】は、その内容(建物の売買・貸借)
※昭和56年6月1日以前に新築された建物が対象となります。尚、一定の者とは、指定確認検査機関・建築士・登録住宅性能評価機関・地方公共団体等がそれにあたります。
・住宅品確法に規定する住宅【性能評価を受けた新築住宅】であるときは、その旨(新築住宅の売買)
・台所・浴室・便所その他の【当該建物の設備の整備状況(事業用建物の貸借の場合でも説明が必要)】(建物の貸借の場合)
※例えばユニットバス等の設備の形態、エアコンの使用の可否、空調設備等、取引の実情等を勘案し重要なものを説明する必要があります。
・【契約期間及び契約の更新】に関する事項(貸借の場合)
※更新時の賃料の改定方法等も該当します。また、こうした定めがない場合は、 その旨の説明を行います。
・【定期借地権】(借地借家法22条)、【定期借家権】(同法38条1項)、終身建物賃貸借を設定しようとするときは、その旨
・当該宅地又は建物の【用途その他の利用の制限】に関する事項(貸借の場合)
・敷金その他いかなる名義をもってするを問わず、【契約終了時】において精算される金銭の精算に関する事項(貸借の場合)
・当該宅地又は建物の管理が委託されているときは【管理者】の氏名(名称)・住所 (主たる事務所の所在地)(貸借の場合)
・契約終了時における当該【宅地上の建物の取壊し】に関する事項を定めようとするときは、その内容
※一般定期借地権を念頭においているものである。例えば、50年後に更地にし て返還する条件がある場合にあっては、その内容が該当します。
・取引の目的となる土地が、土壌汚染対策法に規定する形質変更時要届出区域内 に存する場合は、土地の形質の変更等に関する届出等について説明しなければなりません。
◎当該宅地または建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関し【保証保険契約の締結
その他の措置で国土交通省令・内閣府令で定めるものを講ずるかどうか、およびその措置を講ずる場合におけるその措置の概要(売買・交換)
※「その他の措置」とは、住宅瑕疵担保保証金の供託の事を表します。

◎取引の対象となっている建物がマンション等の【区分所有建物】である場合には、 1棟の建物・その敷地に関する権利、これらの管理・使用に関する事項で、”契約内容の別に応じて”国土交通省令で定める事項(売買・交換の際は下記A~Iの全部、賃貸の際はCとH)を追加して説明しなければなりません。
A.1棟の建物の【敷地に関する権利】の種類・内容
※権利の種類に関しては、所有権、地上権、賃借権等に区別して記載する事とし、対象面積、存続期間、地代等も記載する事とします(通知)。
B.【共用部分】に関する規約の定め(その案を含む)があるときは、その内容
※共用部分に関する規約が長文にわたる場合においては、その要点を記載すれば足りるものとします(通知)。
C.【専有部分の用途その他の利用】の制限に関する規約の定め(その案を含む)があるときは、その内容
※ 例えば、居住用に限り事業用としての利用禁止、フローリングへの貼替工事、ペット飼育、ピアノ使用禁止又は制限等。
D.【専用使用権】に関する規約の内容
※一棟の建物または敷地の一部を【特定の者のみ】に使用を許す旨の規約の定め(その案を含む)があるときは、その内容
※専用庭、駐車場等の専用使用できる範囲、使用料の有無、有料の場合はその帰属先を説明すればOK。使用者の氏名・住所は説明しなくてもOKです。
E.建物の所有者が負担しなければならない【費用】(計画的な維持修繕のための費用・通常の管理費用)を【特定の者にのみ減免する】旨の規約の定め(その案を含む)があるときは、その内容
※新築分譲マンションの場合、未売却住戸について、これらの費用の金銭的負担を減免する規約です。
F.1棟の建物についての【計画修繕積立金】に関する規約の定め(その案を含む)か?あるときは、その内容と既に積み立てられている額(後述、注①参照)
G.当該建物の所有者が負担しなければならない通常の【管理費用】の額(後述、注①参照)
H.1棟の建物・敷地の管理が委託されているときは【管理者の氏名名称住所(法人の場合は、その商号・名称・主たる事務所の所在地)
※管理を受託している者がマンション管理適正化法に規定する、登録を受けている者である場合は、併せて登録番号を記載し、その旨を説明する事とします(通知)。
I.【維持修繕の実施状況】に関する記録の内容
※維持修繕の実施状況の記録が保存されている場合に限って説明義務が課せられるものです(通知)。存在しないことが確認された場合は、その照会をもって調査義務をはたした事になります。
注① 計画修繕積立金および通常の管理費用の滞納があれば滞納額を説明しましょう。また、当該費用の負担額の値上げが予定されているときはその旨も説明します。
注② マンション等の規約等は相当な量に達するのが通例であるのでその要点を記載すれば足りる事としていますが、この場合、規約等の記載に代えて規約等を別添する事としても差し支えありません。
尚、【割賦販売】の場合は次の事項が追加されます。
・【現金】販売価格
・【割賦】販売価格
・宅地建物の【引渡し】までに【支払う金銭の額・賦払金の額】、その支払いの【時期・方法】

説明事項

上記が、説明すべき事項です。
不動産取引における大切なセクションなので少し長くなりましたが、最も押さえておきたいポイントとしては…

ポイント①
取引士は、重要事項の説明に際しては、相手方から【請求がなくとも】取引士証を提示しなければならず、また、説明書面の交付にあたっては、交付する書面に記名押印しなければなりません。

ポイント②
私道に関する【負担がないときには「なし」】と説明する必要があります。
ただし、【建物の賃貸物件】については説明しなくてもよいとされています。

ポイント③
損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがない場合においても説明を【省略する事はできない】点にも注意しましょう。

ポイント④
売買代金、借賃の額は説明事項とされていない点にも注意が必要です。
説明事項とされているものは、それら以外の【手付金、敷金、権利金等】です。

ポイント⑤
説明・記名押印は、【取引士であればよく】、専任の取引士なのか一般の取引士なのかは問いません。

このようなところになります。

いかがでしたでしょうか。
重要事項の説明については、宅建試験にも毎年のように出題されています。
実務未経験の方でも、重要事項の説明についてその概要を知っているか否かでは、不動産業界で働くにあたっての心構えとしても適応力としても、大きく違ってきます。
これから不動産業界への就職や転職をお考えの方や宅建試験を受けられる方は、ぜひ重要事項の説明について押さえておきましょう。

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