最近、原野商法(げんやしょうほう)の被害が再び広がりを見せつつあります。
原野商法とは、「将来この土地は値上がりする」などと言って、全く価値のないような土地を売りつける詐欺です。
わりと昔からよくある手口の詐欺で、日本が高度成長を遂げた1960年代から表れはじめた悪質な商法です。
近年では、2006年に東京都がこうした原野商法を行っている悪質な業者について公表をしました。
また、2014年には奈良地検が不動産会社『未来土地コーポレーション』を原野商法による詐欺罪で起訴し、弁護団による集団訴訟の動きも出ています。
当時、記者会見を行った『未来土地被害対策弁護団』の三木俊博弁護士らによると、同社をめぐる被害だけでも国内36都道府県での事案と海外での事案を合わせて合計約5千人、その被害額は総額13億円以上にも及ぶとの見方を強めています。
一見すると、なぜそんな古典的な手法に引っかかってしまうのかとも思えますが、これがまたなかなか巧妙で、まんまと引っかかってしまうケースが未だにあとを絶ちません。
電話でただ「値上がりする土地を買いませんか?」と言われただけでは引っかかる人も少ないかも知れませんが、この詐欺を仕組む人間らは非常に巧妙かつ用意周到な資料を持参して訪れます。
そして「いま買わなきゃ損ですよ」等々、巧みな話術と心理学を駆使したセールストークに騙されてしまいます。
ターゲットにされる層としては、資産を持ち合わせたお年寄りが多いようです。
こうして売られた土地は酷いもので、「新幹線が通る」ですとか「開発が進む」等の話は全くの嘘であるのはもちろんのこと、更にはそもそも宅地ではない二束三文の山林や原野土地を高額で売りつけられてしまいます。
こうした要素から、この商法は『原野商法』と呼ばれるようになりました。
根本的なところは先物取引の詐欺等々と何ら変わりありません。
原野商法の心痛い点としては、一度騙された被害者が再び騙されてしまうといった二次被害が多々あることです。
具体的には、原野商法に引っかかり購入してしまった土地の運用に困り果てたところにまた悪徳業者が声をかけ、騙されてしまうといった流れです。
「その土地を高く買い取ってくれる不動産屋を知ってますよ、仲介手数料を先に支払ってくれればご紹介します」「その土地を高く買い取りたいのですが、そのためにはまず地籍調査が必要なので、○百万円を支払って」下さい等々、やはり巧みな話術で持ちかけてきます。
”そんなの嘘に決まってるだろうし、何で引っかかるんだろう”と思われる方々も多いかも知れませんが、原野商法に引っかかってしまって途方に暮れ、更には税金や管理費だけかかり続けていて困り果てて精神的に追い込まれているお年寄り等は、藁にもすがる思いで、こうした手口に再び引っかかってしまいます。
まんまとカモにされてしまい再び騙し取られてしまう点では、ワンクリック詐欺や闇金等の手口と共通しています。
悪徳業者は”カモリスト”というのを作成し、徒党を組んでそうしたお年寄りを狙っているという事実もあり、非常に怖い話です。
尚、本来は地籍調査であったりそうした公共事業の測量は無料なので、二次被害におけるこうした手口は完全に詐欺にあたります。
こうした被害を防ぐためには、まずその場でその日にすぐ即決してしまわないことです。
おいしい話には裏があります。
豪華なパンフレット等を見せられて魅力的だなと思っても、額が額ですので、すぐには契約せず、まずは落ち着いて考えましょう。
家族や友人に相談するのも有効です。
詐欺だと気づいてくれた人は、すぐに教えてくれるはずです。
また、こうした詐欺は騙しこまれやすいお年寄りが狙われる傾向にあるので、ご家族でおじいちゃん・おばあちゃんを日頃から目にかけておくことも大切です。
万が一、この被害に遭ってしまった場合でも、クーリングオフが適用されるケースが多いです。
ですので、泣き寝入りせず、まずは消費生活センターに相談してみましょう。
消費生活センターは、地方公共団体が設置している行政機関で、消費者の苦情相談などを無料で行っています。
以上が、最近再びその広がりを見せつつある原野商法についての概要です。
この記事が何かしらの形でご参考になり、原野商法に引っかかってしまう方の被害を少しでも未然に防げれば幸いです。
一日でも早く、こうした詐欺が撲滅されるのを切に願ってやみません。