企業戦略にも様々な種類がありますが、その1つにランチェスター戦略というものがあります。
ランチェスター戦略は元々、戦争についての理論でしたが、その考え方はビジネスにも通ずるものがあり、ビジネス戦略として取り入れている方や企業は多くいらっしゃいます。
年代的には第一次世界大戦の時代に、イギリスのエンジニアであったランチェスターさんが提唱した戦略です。
それまで戦争についての戦略や思想というものは、たとえばナポレオンの「戦術とは、一点に全ての力を振るう事である」「最悪の策とは、そのほとんどが最も臆病な策である」「戦争においては、いたずらに多くの人間がいても何もならない。一人の人間こそ全てである」といったように、わりと名言的な形で士気を鼓舞するものばかりでした。
ランチェスターは初めて戦争を数量的に科学的に考察した人物とも言え、その視点は的確でした。
ランチェスター戦略の主な内容としては、第一法則である「弱者の戦略」、第二法則である「強者の戦略」があります。
第一法則である弱者の戦略とは、お互いの兵数が同じ場合、個々の戦力差が勝敗の決め手になるといった考え方です。
イメージとしては、時代劇で10対10ぐらいで侍が戦っているシーンを想像して下さい。
戦いは、1対1になります。
第一法則の前提条件としては、1対1の戦いです。
第一法則はビジネスにたとえると、中小企業が大手企業へ対抗する際の戦略です。
豊富な資金と社員を擁した大手に対して、大手と同じようなコンセプトで戦いを挑んでは、結果は見えています。
しかし、1対1のようなピンポイントの戦いへ持ち込めたら、どうでしょうか。
そのような状況を作れれば、中小企業も大手に勝てる勝算も見えてきます。
たとえば、塾を営んでいた場合。
小さめの学習塾が大手予備校と同じような大人数のマスプロ的な授業で勝負しようとしても、なかなか勝てません。
資金力の差や社員数の差・生徒数の差など、数の力に飲み込まれて負けてしまいます。
しかし、個別指導や少人数性の授業といった形では、いかがでしょう。
その形態であれば、大手予備校よりも1人ひとりの生徒を目にかけて見られる点で、勝利への道筋を見出せます。
また、1対1で戦う際の武器(強み)も非常に重要になります。
たとえば小さな塾だとしても、その生徒1人ひとりに合わせてオリジナルプリントを作れる講師がいた場合。
その個別指導は、大手のそれに勝てます。
このように第一法則である「弱者の戦略」は、ビジネスの世界では中小企業の戦い方として大いに参考になる点があります。
ポイントとしては、差別化です。
大手では対応しづらいニッチな需要やマニアックなニーズへ柔軟性を持って取り組める点に中小企業は活路を見出せます。
また、ベンチャー企業からのし上がるには、社員1人ひとりの個々の能力が重要になるとも言えます。
一方、第二法則である「強者の戦略」ですが、これは「数」の戦略です。
イメージとしては、軍と軍が入り乱れた大規模な戦いを想像して下さい。
こういった戦いになると、兵士個々の力というより、兵士自体の数が物を言います。
いわゆる、人海戦術です。
ビジネスの世界では、大手は中小企業にとって太刀打ち出来ない資金力や社員数を持ち合わせています。
ですので、大手はその「数」を生かした戦略やパワープレイで戦えば、勝てる可能性は高まります。
具体的には、営業マンを多く擁してどんどん営業にあたらせたり、莫大な資金を投入して広告に力を入れたり、全国に事業所やチェーン店を多く配置したり、場合によっては中小企業やサービスを買収する方法などが大手ならではのやり方になります。
チェーン展開しているファミレスと個人経営の食堂を比較してもらうと分かりやすいかも知れません。
チェーン展開しているファミレスは、全国色んなところにあり、どこでも同じサービス・同じ料理の提供を受けられます。
一定品質が常に守られている点が強みです。
それに対し、個人経営の食堂は、そこでしか食べられません。
また、日によってメニューが違う事もありますし、24時間営業で全国展開しているファミレスのような安定感はないかも知れません。
しかし、余りそうなおかずをたまにオマケしてくれたり、わりとアットホームなお店だとお土産をくれちゃったりなんて事もあったりします。
全国展開のファミレスでは、そういった事はまずありえません。
ですが、それでいいのです。
そうしたイレギュラーな対応というのは、そういった個人経営のお店が出来ればいい事で、全国展開をしているファミレスでそれをやろうとすると収拾がつかなくなります。
大手企業が運営している全国展開のファミレスは、別にそこで勝負しようとしなくていいのです。
24時間・全国各地で営業していて、いつでもどこでも同じ料理やサービスを受けられる安定感で勝負すればいいのです。
また、このように入り乱れた大規模な戦いにおいては、広範囲に攻撃可能な武器(強み)も重要になります。
武器で考えると投石機であり弓矢の部隊であったり、そういったものです。
ビジネスでたとえるなら、ファミレス展開するにあたっての食材供給ルートであったり、大手予備校で実施する全国統一模試などがそれにあたります。
そのあたりは、なかなか中小企業では大手に太刀打ち出来ないところだったりします。
大手企業は少数精鋭の戦い方とは違ってきますが、社員数を多く擁したうえで、その平均的な能力水準を高く保てる事が重要になります。
以上が、ざっくりとしたところではありますがランチェスター戦略の概要です。
この戦略はビジネスシーンにも使われていますが、就職や転職の際に応用する事も可能です。
たとえば、「自分は有名大学を出ていないから不安だ」と思ってしまう場合。
別に、有名大学出身の人達と同じスキルで勝負する必要はないのです。
どの企業を受けるかにもよりますが、TOEICの点数等だけで競う必要は、ありません。
自分の何か特徴を見出せて、それを企業の業務と結びつけられれば、適材適所のマッチ感があり、面接官の評価も高められます。
ぜひ就職活動や転職活動の折に、このランチェスター戦略も意識して取り組んでみて下さい。